Tuesday 19 December 2017

『映画』The Diamond Finger(Niew Petch/ダイヤモンド・フィンガー)


The Diamond FingerNiew Petch/ダイヤモンド・フィンガー)」
  The Art Commission(短編映画特集)より・・・Painting with Light (International Festival of Films on Art)
公開年: 1958
製作国: タイ
監督:  R. D. Pestonji
見た場所: National Gallery Singapore

 こちらはタイ政府の芸術局によって作られた作品。タイの伝統的な仮面舞踊劇Khon(コーン)のパフォーマンスを撮っている。お話は、「ラーマキエン」という「ラーマーヤナ」を元としたタイの叙事詩からのエピソードによる。巨人の国に生まれた小人のNontukは、それゆえにアプサラス(天界のニンフ)達にからかわれ、ハゲるまで髪の毛を抜かれていじめられる。そんなNontukを不憫に思ったシヴァ神が、彼に“ダイヤモンド・フィンガー”、指し示すだけで相手を殺すことのできる魔法の指を与える。この指を得て、アプサラス達を指差ししまくるNontuk。しかし、過ぎた殺戮に対し、ついに美しい女性に化身したヴィシュヌ神が現れる。ヴィシュヌ神は、Nontukがダイヤモンド・フィンガーで彼自身を指し示すように仕向けるのだった。

井戸に映った自分の姿を見つめるNontuk

 舞踊劇をフィルムにおさめているのだが、単に舞台上演を撮影したという類のものではない。映画のために行われたパフォーマンスで、舞台上演的な表現をベースに、映画的な表現も用いられている。きらびやかな衣装にダンサー達の優雅な踊り。例えば、Nontukのダイヤモンド・フィンガーに2030人からのアプサラス達が打ち倒されて行くシーン。彼女達が次々と画面からはけていくのだが、全員一様ではなく、様々な動きで倒れ去って行く。その極めて流麗で美しい有様が俯瞰撮影で捉えられていて、とても印象的だった。

 この作品、タイ製作だが、英語作品である。物語を説明するナレーションが入っているのだが、それが英語。今回ゲストとして来星したタイ国立フィルム・アーカイブのPutthapong Cheamrattonyuさんによると、それはこの作品が、そもそもタイの文化芸術を海外に宣伝するために作られたからである。1950年代、映画「王様と私」のヒット等によって欧米諸国の関心がタイに向けられるようになった。しかし、そうした海外の作品では、タイの文化が必ずしも正しく描かれているわけではない。そうした状況を受けて作られた作品らしい。こうした努力によって、タイは観光大国になっていったんだなーと思った。

 ところで、この舞踊劇のストーリーだが、破壊の神による破壊の後、その混沌から世界を復する維持の神が現れ、それで世界のバランスが保たれる、ということなのだろう。でも、主人公Nontukのことを考えると、憐れまれてダイヤモンド・フィンガーをもらったのに、使ったら懲らしめられて殺されたという、神様達の都合に踊らされているようで、なんかちょっと釈然としない。20171111日)

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