2017年5月6日
「追凶者也(Cock and Bull)」・・・Singapore Chinese Film Festival
公開年: 2016年
製作国: 中国
監督: Cao Baoping(曹保平)
出演: Liu Ye(刘烨)、Zhang Yi(张译)
見た場所: Golden Village, Suntec City
あらすじ:
中国南西部の片田舎。村の住人の一人が惨殺される事件が起こり、自動車修理工のSong Laoer(宋老二)が疑われる。一本気な性格の宋老二は、自らの手で汚名をはらすべく、犯人探しに乗り出すのだが・・・
今年のChinese Film Festivalで見た新作はこれのみだった。この作品は、最初に主人公の宋老二、次に容疑者となる田舎の不良、Wang Youquan(王友全)、それから犯人という順で、それぞれの視点を引き継いで行きながら事件の顛末を語って行く。そのため最初の方では気づかないのだが、最後まで見てしまうと、話運びがどことなくコーエン兄弟の映画っぽいと感じる。人生の風向きを良くしようと思って犯罪に足を踏み入れたらとんでもないことになった、というタイプの話で、なかでも「ファーゴ」を思い出させる。殺人事件の話なのに、ユーモラスな作品でもある、という点が特に。
しかし、「ファーゴ」のように後で人生をしみじみと思うような滋味はない。そして、そこがこの作品の良い所である。人生の悲哀もないわけではないが、それよりも、村のおばあさんから町のチンピラまで、誰しもが大雑把(おおらかとも言う)にタフでないと生きられない世界が描かれる。この人達、落ち込んで家に閉じこもって誰にも会わないとかないのな、たぶん。そんな人々が、殺人事件に端を発する一連の出来事を引き起こしたり、それに巻き込まれたりしていくブラック・コメディである。
この作品最大の面白さは、事件の追跡者、容疑者、犯人の全員がアマチュア(探偵としても犯罪者としても)、というところにある。必死の逃走劇も、命に関わる死闘も、トム・クルーズのアクション映画のようには決してならない。本人達が真剣であればあるほど、その慌てぶりやもがきもあがきが滑稽に見える。そんなアマチュア、素人(役)だからと言って、彼らがあまり動いていないかというと、そうではない。素人が切羽詰まっているという状況だからこそ、全員が体を張っている。必死さを、可笑しくもスリルあふれるものとするために、努力と工夫が凝らされた作品である。特に、宋老二と容疑者王友全の村内追っかけっこと、王友全と犯人との船での死闘は一番の見所。また、一流の殺し屋を装う犯人が、素人ゆえにミスにミスを重ねて行く姿も、可笑し過ぎて逆に愛おしくなってくる。人間ってなんてバカなんだろう。
そんな、我々誰しもがそうであるような人というもののバカさを、(命に関わっているけど)おおらかに受け止めて笑い、非常に楽しい映画だった。(2017年5月28日)
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