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Sunday, 25 June 2017

『映画』海上花(Immortal Story)


201756
海上花Immortal Story)」・・・Singapore Chinese Film Festival
公開年: 1986年
製作国: 香港
監督:  Yon Fan
出演:  Sylvia Chang艾嘉)、TSURUMI Shingo(鶴見辰吾)、Yao Wei
見た場所: National Museum of Singapore

あらすじ:
 マカオで一人の女性が日本人男性を殺害した容疑で逮捕された。容疑者であるMei Lingは、弁護士の求めに応じて、殺された男性との関係を語り始める。10年前、1970年代の古き良きマカオ。レストランの歌手をしていたMei Lingは、旅行中の日本人学生中村と恋に落ちるが、彼はマカオを去って行った。その後、新しい恋人に騙され、絶望の淵に陥ったMei Lingは、高級ナイトクラブの女性経営者、Pak Lanによって救われた。Pak Lanのクラブで歌い、今や売れっ子ホステスとなったMei Lingだったが、再びマカオを訪れた中村と偶然再会する・・・。

中村氏殺害容疑で法廷に立つシルヴィア・チャンのMei Ling

 Chinese Film Festival、「Restored Classics」カテゴリーの一本。当時21歳だった鶴見辰吾が、Sylvia Chang(シルヴィア・チャン)演じる主人公Mei Lingの恋人、日本人青年中村さんを演じる。俳優の実年齢が演じている役の年齢より上で、この役にしては老けてるなー、という苦情は一般的によくある。しかし、この映画では逆に、10年後にマカオに戻って来た鶴見辰吾の中村さんが、若すぎて全くビジネスマンに見えない。でも、大丈夫。この映画の鶴見辰吾は主人公の思い出の中の青年であって、彼に限って言えば、10年前のパートの方が重要。つまり、10年前の学生の姿に真実味があった方が良いのだ。ちなみに、相手役のシルヴィア・チャンは当時すでに30歳過ぎていたが、役柄上は鶴見辰吾とほぼ同い年か、むしろシルヴィアの方が年下という設定である。

 冒頭、弁護士に被害者との関係を問われ、「私は彼を知らなかった。10年前に知っていたかもしれない、いえ、やはり知らない。」などと、まるで「二十四時間の情事」みたいな応答をする主人公Mei Ling。しかし、ひとたび彼女が語り出してみれば、「初恋の思い出はいつまでも美しい」という「冬のソナタ」のような話から、次第にナイトクラブ、ホステス、ヤク中と、夜の世界のメロドラマになっていく。

 この映画を見てしみじみ思う教訓は、貧しい娘が美人であるのに野心がないと、ろくなことにならない、ということである。ギラギラしていれば逞しくのし上がっていく女一代記ができるのだが、そうでないと、美人なだけに、他人の仕掛ける罠にはまって堕ちて行ってしまうのだ。

 単にそういう筋であれば、わりと古典的なメロドラマと言える。しかし、この作品が特徴的なのは、主人公を巡る三角関係が、初恋の男性と現在の雇用主の女性という点。Mei Lingが歌うレストランに毎日通い、恋人に捨てられて弱っている彼女を助け、ついに自分のクラブで雇い、ついでに自分の高級マンションで一緒に暮らすという、やり手ビジネス・ウーマンのPak LanYao Wei)。売れっ子のMei Lingに無理に枕営業をさせておきながら、その後、彼女を風呂に入れて優しく体を洗ってやるというこのアンビバレンス。なお、このお風呂のシーン、見所の一つです。

 ここまで書いてくると、中村さんを殺した犯人が誰なのかは、もう簡単に予想がつくのだが(作品を見ている間でも)、そこはわりとどうでもよいことだと思う。風光明媚なマカオの古い街並も楽しめる、印象的な異色メロドラマ。2017523日)