Sunday 26 April 2020

『映画』Approved for Adoption(Couleur de peau: Miel/はちみつ色のユン)


20181028
Approved for AdoptionCouleur de peau: Miel/はちみつ色のユン)」・・・Painting with Light (Festival of International Films on Art)
公開年: 2012
製作国: フランス、ベルギー、韓国、スイス
監督: Jung(ユン), Laurent Boileau(ローラン・ボアロー)
見た場所: National Gallery Singapore

National Gallery Singapore(ナショナル・ギャラリー・シンガポール)主催による、芸術についての映画を集めた映画祭「Painting with Light」で上映。この「Approved for Adoption(原題Couleur de peau: Miel)」は、ベルギーのバンド・デシネ作家Jung(ユン)が、自らの半生をアニメーションとドキュメンタリー映像で描いた作品で、ドキュメンタリーの作り手であるLaurent Boileau(ローラン・ボアロー)との共同監督作。日本でも「はちみつ色のユン」というタイトルで公開された。

映画祭のプログラムから

冒頭、雪の積もる山間の施設から、先生のような人と一緒に歌いながら歩いてくるアジア系の子供達。一転して食堂のシーンになり、子供達がお椀に注がれたお粥を食べている。自分に与えられたお椀を食べ終わると、隣の子が食べ残していったお椀を当然のように取り上げて、ひたすら食べ続けている男の子が一人いる。この子が、この作品の主人公、ユンである。彼の境遇とどんなキャラクターの子であるのかをこの最初の数分で描き切った、非常に印象的な出だしだった。

ユンは、朝鮮戦争後、海外に養子縁組に出された20万人の孤児の一人である。彼らは米兵と韓国人の母親との間に生まれた子などで、母親が韓国社会の中で子供を育てることができずに捨てられ、海外に養子としてもらわれて行ったのである。ユンも5歳の頃、1人でソウルの通りをさ迷い歩いているところを警察に保護され、孤児院に収容された。そして、ベルギーの夫婦に引き取られて海を渡った。

映画は、アニメーションによるユンの子供時代の回想を中心に、養父母達が撮影した当時の8mm(?)映像、朝鮮戦争後の韓国の状況を説明する記録映像、そして現在、四十代のユンが、養父母に引き取られて以来初めて韓国に「帰った」時の様子を撮影した映像からなっている。

 養父母にはすでに男女合わせて四人の実子がいた。冒頭のシーンからわかるようになかなかタフな性格のユンは、しっかりした養父母の元、四人の子供達とともに、かなりやんちゃな子供としてのびのびと育っていった。しかし、その一方で時おり開かれる密かな記憶の扉があった。


人種が違うゆえにどうしても養子であることを意識せざるを得ない瞬間。街をさ迷っていた孤児の頃。そして(自分を捨てた)顔も思い出せない幻のような母。自分は愛されていたのか、そして愛されているのか。腕白坊主として振舞っているだけにいっそう、言い知れぬその悩みは深い。

 ティーンエイジャーになると、その不安はアイデンティティの揺らぎとともに、ユンの生活態度に現れるようになる。(同じアジアのせいか)日本人に憧れてみるのはまだしも、家出して教会に転がり込み、そこで韓国人たらんとして、ご飯にタバスコ(!)をかけて食べ続ける。(韓国人なら辛い物が食べられるという認識なのだ。)

 タバスコご飯で体を壊したユンを家に連れ帰り、彼の苦悩を優しく受け止めたのは、ベルギーの養母だった。その時、ユンが夢想してきた幻の母はようやく実体を持つ。最後のユンのナレーションの一部、
「人が自分にどこから来たのかと問うのなら、自分はここからで、同時に、別のどこかからなのだ。自分はアジアであり、そしてヨーロッパである。」
 どちらでもない、のではなく、どちらでもある。ユンがそこに行き着くラストは、とても感動的だった。

 ところで、ユンの養父母はさらにもう一人韓国人の女の子を養子にするのだが、養父母が体の弱いその子を特に気遣うことにやきもちを妬いたユンは、こっそり彼女をいじめる。人が悪いことだが、私はこのシーンが何となく好き。2020325日)

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